通関士の需要

国家試験の狭き門を突破し合格はしたものの、資格の種類によってはその資格保有者が飽和状態にあるため、もはや働き口がないと耳にすることがあります。
果たして通関士はどうなのでしょうか。

1.現状

通関士を設置しない通関業者は開業すらできないことは先に述べました。
さらに法律の条文では、「通関業者はその営業所ごとに通関士を1名以上置かなければならない」と定められています。
例えば本社、支店、営業所の3つの事業所を持つ通関業者がその全てで通関業務を行おうとする場合には、3つの事業所それぞれに通関士を1名以上置き、通関書類を審査させる義務があるということになります。
これを聞いて「1事業所に通関士1人だけか・・・」と早合点してしまう方が相当数いらっしゃるようですが、法律で定められているのはあくまでも「1名以上」であり、「1名」ではないことに注意して頂きたいところです。
(最低でも一人は必要ですよ、という意味です。)
「通関業者の1事業所につき通関士が1人勤務」が一般的だとするならば、通関士の資格保有者もご多分に漏れず飽和状態にあると言って良いでしょう。
ところが一般的に通関業者といえば、1日に何十件もの通関書類を捌く(もちろん事業規模やシーズンにも左右されるものですが)会社がほとんどで、多い所では1日に100~200件程度処理する会社もあるほどです。
これ程の数の通関書類を通関士1人で審査することは到底不可能ですので、通関業者の事業所といえば常に複数名の通関士が在籍していることが通例となっています。
(ちなみに鬼通関の会社の通関部は全員通関士です。)
これを踏まえた上、通関士の募集状況を求人サイトなどで見てみると、その募集が途切れることは今のところほとんどありませんので、やはり通関士の絶対数は足りておらず、どの会社も優秀な通関士を欲しているのだという事実を推し量ることができます。

2.今後の展望

現状、通関士の募集条件は「経験必須」だとされているところがほとんどです。
元々幅広い知識の保有を求められる職種である上、二国間又は少数国間での貿易協定の締約が活発化していることがその背景に挙げられます。
EPA(経済連携協定)やTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が締約されると、締約相手国との貿易について膨大かつ詳細な規定が定められることになります。
この規定を熟知する通関士、又は熟知する能力・意欲のある通関士の確保がどの会社にとっても急務となっているため、募集条件が「経験必須」とされているのです。

しかしよく考えてみて下さい。
経験者の募集とは、いずれかの会社を辞めて転職してくる通関士を募集していることを意味します。
即ちこの募集は現職の通関士の他社への移動が誘発されるだけであり、業界全体において不足している通関士の絶対数を補充することにはなっていないのです。
(実際にこの業界では、ある通関業者に勤務する通関士の方が、もっと良い待遇を求めて他の通関業者に転職するという話が珍しくありません。)
公開される募集に合わせて毎回タイミングよく現職の通関士が転職するとも考えられませんので、経験者が一向に応募してこない会社では未経験者でも雇用せざるを得なくなります。
又、上記貿易協定締約の本格化という観点からして、もはやこの業界は次世代を担う新たな通関士の育成を避けて通ることはできません。
ここに「未経験者の入り込む余地が生まれる」ものと鬼通関は考えます。

一方、空港(AIR)に常駐する通関業者は24時間体制で営業を行っており、3交代での勤務体系が一般的となっているわけですが、港湾(SEA)の方でも24時間開港論が熱を帯び始めているのをご存知でしょうか。
その手始めとして、税関の執務時間(基本的に8:30~17:15)外に輸出入申告等を行う場合には別途手数料を支払う必要があったのですが、2008年にこれが全面撤廃され、届出を行うだけで輸出入申告等ができるようになりました。
あくまでもこれは一例に過ぎず、これ以外にも各業界と税関との間で擦り合わせが必要とされる事案は山積みですし、その他越えなければならない壁は数多くありますので、24時間開港が現実のものとなるにはまだまだ年月を要するかもしれません。
しかしこれが現実となった暁には、一気に通関士の数は困窮状態に陥ります。

これらの要因から、この先通関士の需要が高まることはあっても、飽和状態というような状況は当面なさそうだと考えて良いのではないでしょうか。

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